Vol.7|100年前から続く問い
約100年前、柳宗悦が民藝運動を提唱した背景には、近代化や西洋化が進む中で、暮らしの中で使われてきた工芸品や、それを支える職人たちの仕事、ひいては技術そのものが失われていくことへの危機感があったと言われています。 時代は変わり、暮らしも社会も、大きく変化しました。 しかし、その根底にある課題は、今も決して過去のものではないと感じています。 日本各地には、長い年月をかけて培われ、継承されてきた優れた伝統技術が多くあります。 けれども、その技術を支える職人の高齢化や後継者不足、仕事の減少など、多くの課題を抱えていることも事実です。 技術は、保存されるだけでは受け継がれていきません。 それを必要とする人がいて、仕事が生まれ、作品が流通する。その積み重ねと循環の中で磨かれ続けていくからこそ、生きた文化として未来へつながっていきます。 Wearable Heritage Projectは、伝統工芸を「守ること」だけを目的としたプロジェクトではありません。 洋服という従来とは別の文脈の中で、日本の伝統工芸と出会い直し、新たな価値を生み出すことで、職人の仕事が未来へと続いていく仕組みをつくりたいと考えています。 私たちが向き合っているのは、作品づくりだけではありません。 職人、デザイナー、使い手、そして社会。 それぞれを結ぶ新しい関係性を築くことこそ、このプロジェクトの大切な役割だと考えています。 約100年前、柳宗悦が抱いた問題意識は、Wearable Heritage Projectを立ち上げた私自身の思いとも、深く重なっています。
Vol.6|関係性をデザインする
日本の伝統工芸の世界には、人間国宝や著名な作家はもちろん、多くの優れた作り手がいます。 そして、各地で何十年にもわたり技術を磨き続けてきた職人の多くは、必ずしも広く知られているわけではありません。しかし、そうした数多くの職人たちが、伝統工芸の技術や文化を支えているのです。 Wearable Heritage Projectは、その積み重ねられた時間と技術、そして仕事に向き合う姿勢に深い敬意を抱いています。 私たちが大切にしたいのは、一つひとつの作品が、どの職人の、どの技術によって支えられているのか、その関係性を丁寧に伝えていくことです。 織職人、染職人、漆職人、組紐職人、水引職人、そしてデザイナー ──それぞれが培ってきた専門性が重なり合い、一つの作品へと結実します。 Wearable Heritage Projectは、その関係性そのものをデザインするプロジェクトです。 誰が、どのような技術で作品に関わったのか。一人ひとりの仕事と役割を丁寧に伝えることで、作品の背景にある多様な専門性と、その関係性が生み出す価値を社会へ届けていきたいと考えています。