Wearable Heritage Project|構造としての継承
ー 継承は「再利用」では起こらない 着物のリメイクや、いわゆる着物ドレスは、近年とても多く見られるようになりました。眠っていた着物に新たな形を与え、もう一度使えるものとして蘇らせる。 それは、とても美しい取り組みだと思います。資源を無駄にしないという意味で、サステナブルな選択であり、「着物」という文化の記憶を繋ぐ役割も担っていると思います。 ただ、その一方で、ひとつの問いが残ります。 「 それは、職人の次の仕事を生んでいるか」 リメイクは、すでに存在しているものを用います。 つまり、新たな織りや染め、新たな制作を必要としない場合が多い。そこには、新しい発注は生まれません。 構造として見ると、リメイクは「過去の資源を活かす行為」であり、「未来の生産を生む仕組み」とは異なります。 伝統工芸の継承を考えたとき、本当に必要なのは、 技術が使われ続けること。そして、それによって仕事が生まれ続けることです。 継承とは、保存ではなく、循環です。 技術が使われる ↓ 役割が拡張される ↓ 需要が生まれる ↓ 仕事が生まれる ↓ 担い手が育つ この流れが循環することで、はじめて次の世代へと手渡されていく。 その視点で見たとき、既存のものを再利用するだけでは、この循環は生まれません。 この問いに応えるかたちで、新たな制作を前提に、伝統工芸を現代に接続していきたい。 新しい用途の中で、技術が使われること。そこに新たな発注が生まれ、職人の仕事として成立すること。そして、その積み重ねが、次の担い手を育てていくこと。 リメイクが「過去を活かす行為」だとすれば、このプロジェクトが取り組んでいるのは、 未来に仕事をつくるための構造の設計です。 文化は、形を変えながら続いていきます。 そのときに問われるのは、何を残すかではなく、どのように続けるか。 継承は、構造によって成立する。 プロジェクトでは、その構造をつくりたいと考えています。